進化する自毛植毛

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パンチグラフト法から始まり、FUSS法からFUE法、さらには親和クリニックで新たに生み出したMIRAI法へ。効果的な薄毛治療として注目を集めている自毛植毛は、患者さまの負担を減らし、より高い満足度を得られるよう進化し続けています。ここでは、自毛植毛の歴史を振り返るとともに、どのようにして現在の高水準の自毛植毛ができるようになったかをご紹介したいと思います。

自毛植毛の歴史

薄毛で悩む方は「植毛」という言葉を一度は聞いたことがあっても、その内容はよく知らない…という事も多いのではないでしょうか。植毛手術には2種類あり、以前は合成繊維など人工物で作られた毛髪を頭皮に埋め込む人工毛植毛が盛んでした。しかし、この手術法は感染による慢性的な炎症や、体の拒絶反応により人工毛が抜け落ちやすいなど様々なトラブルを引き起こすとして、アメリカでは現在禁止にされています。
日本を始めアジアではまだ禁止されていないため、施術を行っているクリニックもありますが、近年主流なのは「自毛植毛」です。自毛植毛は、自分自身の毛髪を移植するため拒絶反応が起こることもなく、一度移植した毛髪は半永久的に生え続け、伸び続けます。
この自毛植毛手術は1960年代に誕生し、アメリカ人医師のノーマン・オーレントライヒが1959年に「パンチグラフト法」を発表、そして1960年代以降に世界中に普及していきました。

パンチグラフト法とは?

パンチグラフト法は、現在最先端として活用されている自毛植毛手術の原点となっているもので、側頭部や後頭部などの毛髪を皮膚ごと円柱状に切り取り、生え際や頭頂部など薄毛が気になる箇所に開けた穴に差し込む方法です。

自毛植毛の始まりは日本人医師

実はこのパンチグラフト法の考案は、ノーマン・オーレントライヒではなく日本人の奥田庄二医師と言われています。奥田医師は動物実験を経て、パンチグラフト法を確立しており、1939年には火傷による脱毛部分に自毛植毛手術を施し、論文を発表したという記録が残っています。当時は、戦時中でもあり世界中が混乱していたため、偉大な研究成果であったものの埋もれてしまいました。その後、2003年以降に論文が発見され国内外で世界で初めて自毛植毛を行ったのは奥田庄二医師と歴史が修正されました。

自毛植毛の術式

自毛植毛にはどのような手術方法があるのでしょうか。前述した通り、自毛植毛の始まりは「パンチグラフト法」ですが、日々研究が進み、多くの手術方法が編み出されています。手術方法とそれぞれのメリット、デメリットを見ていきましょう。

始まりの「パンチグラフト法」

「パンチグラフト法」は、まずAGAになりにくい側頭部や後頭部から円柱状に皮膚と毛根の束を切除します。それを脱毛部分に一回り小さく穴をあけて差し込み、植えつけるという方法です。当時は画期的な手術でしたが、傷跡が残ることや移植した毛髪の密度が低いこと、生え際が不自然なことや毛根の向きを調整できないこと、2~3回目の手術に支障が出ることなど欠点も多く、今では顧みられなくなりました。

1995年に発表された『FUTストリップ法(FUSS法)』

1995年に発表された『FUTストリップ法(FUSS法)』

現在では主流ではありませんが、10年以上前に盛んだったのは「FUSS法」で、後頭部などAGAになりにくい箇所から皮膚ごと毛髪を帯状に切り取り、細かく分けて移植する方法です。帯のサイズは約1cm×約15~30cm程度で、後頭部などから毛髪が残っている皮膚を毛根ごと切り出します。個人差はありますが、毛髪は通常1つの毛穴から2~3本の毛がまとまって生えており(毛包単位)、頭皮1㎠あたり150~170本の毛が生えているとされています。産毛などを含めると200~500本とも言われます。この切除した帯状部分を縫合しつつ、切り出した皮膚を毛包単位の小さな株に切り分けます。毛包の保存状態が悪くなると移植後の生着率が低くなるため、切り分け作業は低温を保ちながら慎重に行っていきます。
次に移植が必要な箇所にホールを作成し、株分けされた毛包を植えつけますが、この植え付け作業にはいくつかの方法があります。1つは、マイクロブレードという極小のメスや植毛針を使って切り込みを作り、極小のピンセットでその切り込みへ毛包を植え込んでいくものです。毛包を傷つけないよう、細心の注意を払わなければなりません。その他、ホールの穴開けと毛包の挿入を同時に行える手動式の植毛器を使った方法があります。このようにして植えつけられた毛包は、タンパク質のフィブリンや血小板などによりしっかり接着されます。この移植した毛髪が根付いて生えることを「生着」といいますが、もちろん移植した毛髪の全てが生着するわけではありません。「FUSS法」の生着率はあまり高くなく、ドナーを傷めてしまうことが多いのが理由でした。移植ホールに接着した毛包は3日ほどで周囲の頭皮から栄養を受け取れるようになり成長が始まります。その後、1週間から10日ほどでしっかりと生着していきます。

FUTストリップ法(FUSS法)のメリット

移植した後に生着しやすく、1回の施術で多くの毛髪を移植できる点がメリットです。また、広い面積で毛髪の採取と移植ができるため、薄毛の範囲が広い方に適しています。

FUTストリップ法(FUSS法)のデメリット

この「FUSS法」は、10年以上も前に流行りましたが、デメリットが多い手術でもありました。主なデメリットは以下の通りです。
・後頭部に皮膚を帯状に切り取った傷跡が残る
・手術後は激しい痛みがあり、7~10日前後は仰向けに寝ることが難しい
・採取した後頭部に突っ張り感など違和感が強い
・皮膚に凹凸が残る場合がある
・採取可能な株数に限度があるため、大量の移植は行えない
・移植後の毛髪の密度が低い
・株へのダメージが大きいため、生着率は高くない

他にも、帯状で採取する際に株を選ばないことにも問題があります。帯状に切り取った場合、その毛髪には移植に適したものと適さないものが存在します。せっかく採取しても移植に適さない毛は必要ないため、捨てられていました。そのことから「愛のない手術」と呼ばれることもありました。さらには、2週間経って抜糸をした後も、切除した後頭部の帯状の傷が赤く痛々しい状態であることも多かったのです。

2001年に発表された『FUE法』

2001年に発表された『FUE法』

一方、現在主流となっているのは「FUE法」です。これは、「FUSS法」のように後頭部の皮膚を切り取らないため縫合する必要がありません。専用のパンチでくり抜き採取した毛髪を、薄毛部分に移植する方法です。メスを使わなくて済むので「FUSS法」の課題が大幅に改善されました。手術したことを極力バレたくない方におすすめです。

FUE法のメリット

1本毛~4本毛など移植部に合わせて採取するドナーの種類を選ぶことができるため、ドナーの大きさや移植先の毛穴が均一で仕上がりが良いのが特徴です。また、FUSS法と違い、メスを使わない手術のため、痛みが少なく手術跡が目立つこともありません。手術後のダウンタイムが短いこともメリットでしょう。

FUE法のデメリット

一つ一つ採取するドナーを選び、植え込んでいくため大量移植には向かないとされています。しかし、医師の技術に左右されることが多く、近年では1時間で1000株以上のメガセッションを行うことができる研鑽を積んだ医師やクリニックが増えてきているため、デメリットと言えるほどのことではなくなってきました。

2011年にFDA認可された『ARTAS植毛』

2011年にFDA認可された『ARTAS植毛』

「ARTAS植毛」とは2011年にFDAが認可した特殊なロボットを使ってドナーを採取し、人の手で移植する方法です。ドナーの採取をロボットで行うため、医師個人の技術に左右されたり、長時間手術の疲労からくる精度・効率の低下を避けることができます。まだまだ取り扱うクリニックが少ないARTASですが、メスを使った手術に抵抗がある方や、なるべく費用を抑えたい方におすすめです。

ARTAS植毛のメリット

「ARTAS植毛」のメリットは、ロボットで採取を行うため手作業の手術より人為的ミスが起こりにくいこと、手作業の手間が省けるため費用を安く抑えられることでしょう。

ARTAS植毛のデメリット

デメリットは採取できる毛髪量や範囲に限度があること、ARTASを取り扱っている医療機関が少ないことが挙げられます。

進化し続ける親和クリニックの自毛植毛

進化し続ける親和クリニックの自毛植毛

「FUSS法」の様々な課題をクリアした「FUE法」ですが、独自研究を重ねさらに進化させたのが親和クリニックの「MIRAI法」です。オリジナルで開発した施術用のマシンを使うことによって、より自然な仕上がりや患者さまの負担軽減にも繋がり、さらに、適切なグラフトの採取と素早い移植により高い生着率を誇ります。この「MIRAI法」は、手術の痛みを抑えたい方や傷口をできるだけ小さくしたい方、時間がかかってもしっかり生やしたい方、移植後のヘアスタイルを重視したい方やバリカンで刈り上げるのに抵抗がない方におすすめです。

今までの「FUE法」と「MIRAI法」では何がどう違うのか、比較して見ていきましょう。

①グラフト採取

自毛植毛はまず側頭部や後頭部から毛包単位で毛髪を採取します。「FUE法」では直径1mm前後のパンチブレードを使いますが、「MIRAI法」では0.8mmのパンチブレードを使います。より細い機器を使うことで不要な株を傷つけません。良い毛だけを見極め、見えない皮膚の下の毛の流れをミクロ単位で微調整し、一株一株毛を切断しないよう慎重に採取します。とても細かく大量に採取できるうえ、メスを使わないため傷は小さく跡も目立ちにくいのが特徴です。

②移植ホール作成

続いて、採取した株を植えつけるためのホールを移植箇所に開けていきます。「FUE法」ではメスを使い、切り込み(スリット)を入れていきますが、「MIRAI法」ではメスは使いません。超極細のマイクロパンチブレードで丸いホールを作ることにより圧力でホールが膨らまず、グラフト同士を近づけて植え込むことができます。親和クリニックでは、これまでの最小径であった0.6mmより小さな最小径0.5mmのパンチブレードを開発。これにより傷跡をより小さく、目立たないものにすることができます。
従来のFUE法とMIRAI法の違い

また、メスでは高い密度のホールを作ることが困難だった「FUE法」に比べて、ホールのサイズが小さいため、高密度で自然なデザインの自毛植毛を実現しました。

③グラフト移植

最後に採取した株を移植ホールに植え込みます。「FUE法」ではピンセットでグラフトを一株一株スリットに植え込んでいきますが、「MIRAI法」ではグラフトセッターという機器を使い、一株ずつ空気圧で移植します。「FUE法」のスリットはメスを使うことによって線状になっているため、移植株がうまく入らず生着しない可能性がありました。「MIRAI法」は移植株よりもホールが小さいため、自然な圧力がかかり生着率をより高めています。

④術後の痛み

「FUE法」も「FUSS法」に比べると痛みは比較的少なく、「MIRAI法」にいたってはわずかな痛み程度です。気になる場合は鎮痛剤で対応可能です。

⑤傷跡

「FUSS法」に比べて目立ちにくい「FUE法」ですが、「MIRAI法」では髪の採取部分・移植部分どちらも小さな傷跡でほとんど目立ちません。

⑥費用

もともと「FUE法」は「FUSS法」よりも採取の難易度が高いためやや高額ですが、
「MIRAI法」は手作業で行い、高い技術を求められるため、他の術式と比べ高額です。しかし、生着率が高く、傷跡や痛みがほとんどありません。定期的なメンテナンスも要らず、一度受ければ半永久的に生え続けます。

さらにその先へ

メスを使わず、痛みやダウンタイムが少なく、高密度で大量移植ができる「MIRAI法」ですが、親和クリニックでは、さらに患者さまの負担を少なくし、高い満足度を得てもらうため研究を重ねて、新たな手術法を生み出しました。

NC-MIRAI法

NC-MIRAI法

画期的な「MIRAI法」ですが、移植する際に後頭部の髪の毛を借り上げるという唯一の欠点がありました。隠すためのカバーシートを使う事はできますが、接客業や営業マンなど人前に出なければならない仕事で困っている人がいるのも事実。体には何らダメージがないものの行動が制限されてしまう点が問題でした。しかし、その唯一の欠点を解決する「NC(ナチュラルカバーリング)-MIRAI法」が登場。親和クリニックオリジナルで後頭部をバリカンで刈り上げずに植毛を行う手術法です。1本1本長い髪を細かくカットしながら株を採取していきます。非常に緻密で手間がかかりますが、採取後の小さな傷を自身の周囲にある髪で隠せるため、ヘアスタイルも変わらず、周りから見ても気づかれることがない点が大きな魅力です。満足度が非常に高い究極の植毛手術ですが、施術の難易度が高く、世界中できちんとこの手術ができるのは親和クリニックだけといっても過言ではありません。海外に似たような手術を行っているところもありますが、口径の大きな器具の使用や技術も稚拙で長時間かかる手術のようです。

United MIRAI法

United MIRAI法

さらに、患者さまお一人おひとりに合わせてカスタマイズできる自毛植毛、業界初の親和クリニックオリジナル「United MIRAI法(U-MIRAI法)」もあります。リーズナブルな「MIRAI法」と手間がかかるため割高な「NC-MIRAI法」を組み合わせたまったく新しいオーダーメイドの植毛です。例えば、ご自身の毛髪で隠せる部分はMIRAI法をメインに行い、他の部分はNC-MIRAI法を併用します。そうして刈り上げる部分を少なくすることによって刈り上げ部分が目立たない髪型にすることができ、しかもコストを最小限に抑えることができます。このように、患者さまの髪の状態や要望、予算によって組み合わせてオーダーメイドで対応できるのが「United MIRAI法」最大のメリットです。

名古屋 院長 福島 俊彦

【記事監修】名古屋 院長 福島 俊彦

経歴

  • 平成2年 福島県立医科大学医学部 卒業
  • 平成6年 福島県立医科大学大学院 修了(医学博士)
  • 平成8年 福島県立大野病院 勤務
  • 平成15年 国立郡山病院 勤務 医長就任
  • 平成22年 福島県立医科大学医療工学講座、器官制御外科学講座 准教授 就任
  • 平成22年 福島県立医科大学附属病院 医療安全管理部 副部長 兼任
  • 平成25年 福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座、器官制御外科学講座 准教授 就任
  • 平成28年 親和クリニック 勤務
  • 平成29年 親和クリニック名古屋 院長就任

挨拶

SNSなどで注目を浴びている自毛植毛ですが、植毛技術の歴史は古く1939年戦時中の日本人医師の発表した論文が現在の植毛技術の元祖と言われています。論文発表から80年以上、今もなお医師たちの研鑽によって自毛植毛は進化し続けています。自毛植毛の歴史を知っていただき更に多くの方に興味関心を持っていただけたらと思います。